平成18年度において以下の通り所定の成果を得ることができた。第一に、サル用高磁場磁気共鳴画像システム高機能化の達成については、昨年度より傾斜磁場電源の強化・傾斜磁揚性能の向上に取り組み、その結果、撮像性能としては、single-shot EPIが可能となり、フリップアングルも90°が設定可能となって信号強度増大をもたらした。しかし、傾斜磁揚性能の向上に伴い騒音(ことに高周波数帯域)の発生が増大し、隣接する医学部学生実習室への影響が大きいことが判明した。そのため追加工事が必要になり、関連実験の終了が3ケ月遅延する事態となったが、すでに平成18年度科学研究費補助金研究経過報告書に記載したように繰越手続きにより計画通りこの項目を達成することができた。第二に、サルfMRIにおける認知課題の解析については、ヒトfMRIのデザインとの比較した近時記憶課題を用いての結果をTrend. Cogn. Sci.誌に発表した。第三に、側頭葉における神経回路の解析については、大脳皮質の6層構造が神経回路・情報処理に果たす役割を解析する為に、慢性行動サル標本において、微小電極によるニューロン記録部位を高磁場MRIを用いて精密に決定する方法を創出した。静磁場B0方向および位相エンコーディング方向を微小電極の長軸方向と一定の関係に保つことにより、微小電極先端の位置を100μmの精度で決定することができることを見出し、成果をNature methods誌に発表した。第三に、前頭葉・頭頂葉系の認知制御機能の解析として、性格検査法による個人差の分散と脳活動の関係およびtheory of mind課題等の成果を投稿中である。以上のように、これまでの研究を統合的に検討して全体のまとめをすると共に、今後の新しい研究方向(例えば、大脳皮質6層構造の神経回路解析)を積極的に開拓できたと評価している。
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