研究概要 |
本特別推進研究の当初計画は4つの下位目標を有していた。 1)第1の下位目標は「サル用高磁場磁気共鳴画像システムの構築」であった。計画当初、サルを被験者とするfMRI法による研究はまだ揺藍期にあり、その重要性を疑問視する意見も多数存在したが、現在その重要性は明らかである。4.7テスラ磁気共鳴画像システムは現在完全に稼動し、全脳をカバーするsingle-shot EPI画像を1.25mmの解像度で撮像できる。 2)第2の下位目標は「認知課題におけるヒトおよびサル大脳活動比較と領野間ホモロジー」であった。ヒトとサルの認知機能を直接的に比較する新しい研究方法を提唱し、覚醒行動サル標本におけるfMRI計測の実用性を世界に先駆けて示し(Nakahara et al.,2002;Koyama et al.,2004)、ヒト下部前頭回とサル弓状溝前壁部のホモロジーを示した重要な貢献は、Science誌(Vo1.295,No5559,2002)の中表紙図に掲載され高く評価されている。 3)第3の下位目標は「文脈記憶、出典記憶の記銘と想起を支える前頭葉・頭頂葉機能の解析」であった。注意シフト・近時記憶課題では認知機能の分散型制御の実例を示し(Konishi et a1.,2002a,2003,2005)、ヒトのメタ記憶をFeeling-of-Knowing(FOK)課題で解析し、 FOKの強さの自己評価の相関からFOK関連領野を同定した(Kikyo et al.2002,2004)。 4)第4の下位目標は「サル大脳前頭葉・頭頂葉・側頭葉活動の侵襲的ミクロ解析」であった。大脳側頭葉内のTE野から36野へ向けて連合記憶がニューロン反応選択性の変化として形成される前向き情報処理(Naya et al.,2003)と、その形態学的基礎として軸索側枝の刈込み・発芽の重要性(Yoshida etal.,2003)を示し、前頭葉・下部側頭葉において、作業記憶中に保持された位置情報を運動プログラムに変換する機能を大脳運動前野ニューロン群が担うことを見出した(Ohbayashi et al.,2003;Fukushimaet al.,2004;Takeda et al.,2005)。 これらの結果は、計画の全体目標を十分に達成した成果であると評価している。
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