研究概要 |
蛋白質輸送装置を介したミトコンドリア(Mt)膜の形成機構、並びに膜の分裂・融合の制御の機構を明らかにすることを目指して計画を実施し以下の成果を挙げた。【膜蛋白質挿入機構】(1)外膜輸送装置:装置の中心的成分であるTom40を可溶性の均一な状態で精製することに成功した。この標品は前駆体蛋白質の結合活性とチャネル活性を持つ。さらにN-末端領域を削除した20KDaの部分が全く同じ機能を持つ事を見出した(Suzuki et al.,in preparation)。両者についてX-線とNMRによる構造解析を行っている。(2)外膜蛋白質の標的化:(a)C-末アンカー蛋白質Tom5のシグナルの特性の解析を終え、C-末アンカー蛋白質の標的化には2種類の経路が存在することを明らかにした(Horie et al.,2002;Horie et al.,submitted)。(b)分子内アンカーを持つTom22と5回膜貫通領域を持つPBRのcDNAを分離し様々な変異体を作成してMt標的化と膜挿入過程の解析を行っている。(3)内膜への組み込み:ポリトピック内膜蛋白質ATM1は従来知られていたものより格段に強力なマトリクス輸送シグナルを持ちこれによって小胞体への輸送が回避されることを明らかにした(Miyazaki et al.,in preparation)。(4)アポトーシス因子の膜間スペースへの輸送:AIFの輸送をin vivoで解析しN-末17残基がマトリクス輸送シグナルとして働くこと、膜貫通領域が膜間スペースへの局在化に必要なことを明らかにした。【Mtの分裂・融合機構】(1)ラットからFzoをコードする2種類のcDNA (Mfn1およびMfn2)を分離して解析を行い、Mfn1とMfn2は共にMt融合に必須であり、かつ協調的に融合に関わっていることを明らかにした(Ishihara et al.,2003;Eura et al.,submitted)。(2)Mt形態形成に関わる因子として、OPA1、Drpとそのミトコンドリア外膜受容体Fis1のクローニング、抗体作成、局在の解析、並びにMt形態への影響の解析を行った。
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