研究概要 |
ミトコンドリア(Mt)膜の合成と膜の分裂・融合制御の機構を解明することを目指して計画を実施し以下の成果を挙げた。【膜蛋白質挿入機構】(1)外膜輸送装置:チャネル成分Tom40についてN-末領域を削除した20KDa部分がβ-barrel構造をとり前駆体蛋白質を分子内に隔離する活性を持つ事を見出した(Suzuki et al.,投稿中)。新規な外膜の輸送受容体rTOM38を見出し機能解析を行った(Komiya et al.,投稿準備中)。(2)外膜蛋白質標的化:(a)C-末アンカー蛋白質のMt標的化に2種類の経路が存在することを明らかにした(Horie et al.,2003)。(b)分子内アンカー蛋白質Tom22の標的化とTOM複合体への組み込みのユニークなシグナルを明らかにした(Nakamura et al.,2004)。5回膜貫通蛋白質PBRの標的化・膜挿入・配向性を評価する系を確立した。(3)内膜組み込み:ポリトピック内膜蛋白質ABCmeは従来知られていたものより格段に強力なマトリクス輸送シグナルを持ちこれによって小胞体への輸送を回避することを明らかにした(Miyazaki et al.,投稿準備中)。(4)アポトーシス因子AIFの膜間部への輸送:AIFはN-末をマトリクス側にC-末を膜間部に出した内膜蛋白質であること、アポトーシスシグナルに応じて膜結合部が切断をうけC-末断片がMt外に輸送されるという興味ある現象を発見した(Ohtera et al.,投稿準備中)。【Mtの分裂・融合機構】(1)ラットMtの融合に関わる2種類の因子Mfn1およびMfn2を見出し、それらは共に融合反応に必須であること、両者は異なるGTPase活性によって複合体状態を変化させ融合を調節することを明らかにした(Ishihara et al.,2003;Eura et al.,2003;Ishihara & Mihara,投稿中)。(2)膜間部位に局在するOPA1は複数の存在状態を通してMt形態を調節しているが、m-AAA型プロテアーゼがそのプロセシングに関わることを見出した。Drp1のMt外膜受容体Fis1を見出しその機能領域の解析を行った(Johfuku et al.,投稿準備中)。細胞周期におけるMtの分配を観察する系を確立し、Drp1とFis1の量が細胞周期に同調して調節されることを見出した。
|