研究概要 |
ミトコンドリア(Mt)膜の合成と分裂・融合の機構解明を目指して計画を実施し以下の成果を挙げた. 【膜蛋白質挿入機構】(1)C-末アンカー型蛋白質の輸送経路を培養細胞とセミインタクト細胞で解析しTom5以外はTOM複合体に依存しない経路で膜に挿入されることを明らかにした(大寺ら、投稿準備中).(2)5回膜貫通型外膜蛋白質PBRの標的化・膜挿入をin vitroおよび培養細胞で解析し、Tom70に依存し、Tom40チャネルには依存しないユニークな経路で膜に挿入されることを明らかにした(大寺・堀江ら、投稿準備中)。(3)従来のTOM40に60%ホモロジーを持ち、脳に強く発現している新たなTOM40bを見出し解析を進めている.(4)内膜の5回膜貫通蛋白質で内膜からのエクスポートに関わるOXA1の膜内配向性を決定する重要な配列の存在を見出した(佐藤ら,投稿準備中). 【Mtの分裂・融合機構】(1)Mt融合因子Mfn1およびMfn2に結合する55kDaの細胞質因子MIBを同定した。MIBの過剰発現でMtは分裂し、また発現抑制によりネットワークの発達したMtが形成される。MIBはMfnの活性を負に制御していると結論した(江浦ら、投稿準備中)。(2)膜間部位に局在するOPA1は複数の存在状態を介してMt形態と機能を調節すること、m-AAA型プロテアーゼが切断に関わることを見出した(石原ら,論文修正中).(3)Drp1のMt外膜受容体Fis1を見出し機能領域解析を行った(城福ら,BBRC 2005).(4)DRP1のノックアウトマウス作成:胎生10.5日で致死性を示し、血管新生が障害されている可能性がある。そのMEFは異常に延びたMtを持ち、アポトーシス耐性を示す(城福ら、投稿準備中)。(5)細胞周期に於けるMt形態変化とDrp1の関与を解析した。M期にDrp1のリン酸化に依存してMt分裂が惹起されること、Drp1の活性を抑制するとMtは不均等な分裂を行うことを明らかにした。細胞の生育速度は影響を受けないことから、Mt分裂がチェックポイントとなることはないことが明らかになった。(6)線虫を用いて遺伝子ノックダウンによりMt形態制御に関わる遺伝子を網羅的に解析する実験に着手した。その結果、機能解析のなされていないキネシンファミリー蛋白質がターゲットとして浮上し、集中的に解析を進めている。
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