研究概要 |
液体ヘリウムの表面は究極の清浄表面である.その表面に形成される低次元系には2次元電子系,液体^4He表面に吸着された1層以下の希薄^3He原子層,液面下に蓄えられる正および負の2次元イオンプールなどがある.この研究ではヘリウム表面上の電子と表面下のイオンをプローブとして,液体ヘリウム表面の持つ界面としての特性を探求するとともに,ヘリウム液面上の電子を面内に閉じ込める技術を開発し,ミリ波吸収による量子状態の制御と量子ビットへの応用の可能性を探るという2つのテーマについて研究を実施する. 本年度は希釈冷凍機の新研究棟への移設・調整と130GHzマイクロ波のインサートへの導入を行った.希釈冷凍機の移設・調節がほぼ終了し,良好な冷却性能を得ることができた.インサートへのマイクロ波の導入はセラミック導波路を採用し,各種のテストを行った.この実験装置はヘリウム液面上で量子ビットを作成する試みに使用する.その際に必要となる電極の微細加工は理研ナノサイエンス研究プログラムを活用して進める予定であり,同プログラムとの連携を進めている. ^3He表面の性質を解明するために,核断熱消磁クライオスタットを建設中である.来年度の完成を目指して作業を行っている.さらに,方位を制御できる核断熱消磁クライオスタットの建設をスタートし,今年度は回転防振架台の導入と希釈冷凍機ユニットの購入を完了した.平成15年度中に建設を行う.東京大学物性研究所に設置されている断熱消磁冷凍機を用いた実験ではヘリウム表面下のイオンプールの測定を改良すべく,新規に試料室を作成中である.来年度には測定を開始する. これらの既設および新規導入の実験装置を駆使して実験を行う予定である.
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