研究概要 |
液体ヘリウムの表面は究極の清浄表面である.その表面に形成される低次元系には2次元電子系,液体^4He表面に吸着された1層以下の希薄^3He原子層,液面下に蓄えられる正および負の2次元イオンプールなどがある.この研究ではヘリウム表面上の電子と表面下のイオンをプローブとして,液体ヘリウム表面の持つ界面としての特性を探求するとともに,ヘリウム液面上の電子を面内に閉じ込める技術を開発し,ミリ波吸収による量子状態の制御と量子ビットヘの応用の可能性を探るという2つのテーマについて研究を実施する. 本年度は希釈冷凍機の調整と130GHzマイクロ波を用いたヘリウム表面上2次元電子の励起状態への遷移に伴う吸収信号の探索を行った.冷凍機の調整とマイクロ波導入機構の整備を完成し,InSb検出器の使った吸収信号の探索を行ったが,現時点ではまだ信号を確認していない.電極構造の改良など,2次元電子系の制御性を向上させる余地があるので今後の課題とする.^3He表面の性質を解明するために,核断熱消磁クライオスタットを建設中であったが,建設をほぼ完了し,3月中には最初の冷却試験を行える予定である.方位制御および連続回転可能な核断熱消磁クライオスタットの建設を進め,回転防振架台を支えるベアリングの交換など,前年度購入品の不具合を解決し,冷凍機インサートの製作も最終段階に入った.希釈冷凍機ユニットをインサートに取りつけた,希釈冷凍機冷却試験を16年度早々に実施する予定である. 東京大学物性研究所に設置されている断熱消磁冷凍機を用いた実験では試料容器設置の過程で希釈冷凍機に亀裂が入り,真空漏を起こしてしまったので,その復旧に時間を費やした。現在,冷凍機を運転して冷却性能を調べているところである.冷凍機が回復し次第測定に入る.
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