研究概要 |
転写メディエーターは多様な転写因子の活性に関与するため、その変異マウスは胎性致死となることが多く、生理機能を解析するためには組織特異的変異マウスの作製・解析が不可欠である。しかし従来の方法では、組織特異的変異マウスの作製には通常年以上の期間と多大な労力を要する。そこで私達はRNAポリメラーゼIIプロモーターから長い二本鎖RNAを発現させる新規なベクター(pDECAP)を開発し、このベクターを導入したトランスジェニックマウスを作製し、マウス個体レベルでRNA interferenceを用いて、特異的遺伝子の機能を低下させることに成功した(Genes&Dev.,2003)。私達の方法では種々の組織特異的プロモーターを用いることが可能であり、またトランスジェニックマウスを作製する方法を利用するので、3ヶ月間程度の短期間で変異マウスが作製することができる。 また転写コリプレッサーSkiの細胞内局在を解析し、ある種の細胞ではSkiが細胞質にも局在すること、細胞質での局在には新規因子C184Mが関与することを見い出した。C184Mは肝細胞などに多く存在し、TGF-βシグナル伝達経路の制御に関与することが示唆された(JBC,2003)。 またSkiに直接結合する因子としてHIPK2を同定した。BMPシグナル伝達経路上で機能するSmad1蛋白質とSmad1の結合は弱いが、HIPK2によって両者の結合が強くなり、SkiによるBMPシグナル伝達経路が効率良く阻害されることが示された(JBC,2003)。
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