研究概要 |
c-Myb原がん遺伝子産物の活性がどのようなシグナル伝達経路によって制御されているのかは長い間不明であった。私達の本年度の研究によって転写メディエーターがc-Myb活性の制御に重要な役割を果たしていることが明かとなった。まずキナーゼ活性を有する転写コリプレッサーとして報告されていたHIPK2がMAPキナーゼファミリーの一つNLKと共にc-Mybに結合することを明らかにした。一連の解析から、WntシグナルがTAK1→HIPK2→NLK→c-Mybと伝達され、NLKがc-Mybをリン酸化し、プロテアソーム依存的なc-Myb分解を誘導することを明らかにした(Genes & Dev.,2004)。c-Mybに比べて強い細胞がん化能を持つv-Mybは、C端側のNLKリン酸化サイトを欠失しており、そのためWntシグナル依存的な蛋白質分解を受けにくいことも明らかにされた(JBC,2004)。 一方、c-MybにはSki, N-CoR, mSin3A, TIF1βの4つのコリプレッサーが協調的に結合することが明かとなった(JBC,2004)。これらのコリプレッサーはコアクティベーターCBPと競合的にc-Mybに結合し、c-Mybの転写活性化能を抑制する。そして、v-MybはC端側を欠失しているためにこれらのコリプレッサーとのアフィニティーが低いため、強い転写活性化能を有することが示された。 さらにがん抑制遺伝子産物p53がDNA上のc-Mybに結合し、コリプレッサーmSin3Aをリクルートすることによって、転写を抑制することが明らかにされた(JBC,2004)。p53が多様な遺伝子の転写を抑制するメカニズムはこれまで不明であったが、この結果からP53がc-Mybなどの転写因子を介して転写を抑制することが示された。
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