研究概要 |
昨年度はWntシグナルがTAK1,HIPK2,NLKを介してc-Mybのリン酸化、プロテアソーム依存的な分解を誘導することを明らかにした。今年度はMybファミリーの他のメンバーであるA-MybのWntシグナルによる制御機構を解析した。その結果、Wntシグナルはc-Mybの場合と同様に、TAK1,HIPK2,NLKを介してA-Mybの転写活性化能を抑制するが、そのメカニズムは全く異なることが示された。A-MybがNLKによってリン酸化されると、その分解は全く誘導されないが、A-Myb結合サイト近傍のヒストンH3 K-9のメチル化が誘導され、その結果、転写が抑制されることが示された。このように、Mybファミリーの転写因子はWntシグナルとコリプレッサーHIPK2を介した多様なメカニズムによって、負に制御されることが明らかとなった。 また幾つかの転写因子と結合することが報告されているShn-2の生理機能を解析した。Shn-2変異マウスでは白色脂肪細胞の形成不全が見られ、MEFs(Mouse Embryonic Fibroblasts)を用いたin vitro分化系においてもShn-2欠損細胞は脂肪細胞への分化効率が低い事が示された。一連の解析の結果、Shn-2は脂肪細胞分化の鍵である転写因子PPARγ2の誘導に必須であること、特にShn-2はBMP-2によって細胞質から核内へ移行し、PPARγ2プロモーター上でSmad1/4やC/EBPαなどの転写因子と複合体を形成することが示された。これらの結果から、Shn-2は複数の転写因子による協調的な転写活性化に重要で、複数の転写因子がCBPなどのコアクティベーターと効率良く結合するのに適したコンフォメーションを取るためのプラットフォーム因子として機能することが示唆された。
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