研究概要 |
「生物にはどのような遺伝子があるのか」については、ゲノムプロジェクトとして世界的に行われてきた。今後は、これら遺伝子が「いつ、どこで、どれだけ発現しているか」を調べることが疾病の診断や予防法の開発、環境問題対策の研究開発を飛躍的に進歩させる手段として期待されている。特に、この「ポストゲノム研究」で中心となるのは,遺伝病の克服,多因子病の治療や予防,一遺伝子多型(SNPs)を解析して個人差を知りその人の体質にあった薬を創り出す「ゲノム創薬」といった医療分野である。 cDNAマイクロアレイはそのためのツールとしてもっとも注目されている技術である。そこで、本研究では、キャピラリープレートガス比例計数管(CGPC)をCCDカメラや光電子増倍管を用いたcDNAマイクロアレイスキャナーと比較して100倍の感度と高速処理系および幅広いダイナミックレンジを持つcDNAマイクロアレイ解析用光検出器として応用するための実用化に向けた開発研究を行った。 具体的には、CGPCの封入ガスとしてアルゴン、メタン、TMAのペニングガスを用いて22keVのX線入射時の発光像を観察しCGPCの基礎評価試験を行った。X線イベント1発1発の飛跡像を明瞭に捕らえることができ、その飛跡分布がX線の無偏光を反映した等方分布であることを確かめた。本研究結果は、Nucl. Instr. and Meth.に論文が受理されている。また、本装置を高輝度光科学研究センター(SPring-8)および高エネルギー加速器機構のフォトンファクトリー施設に設置して、エネルギーの異なるX線を直径約400μmφにコリメートして入射させ本検出器の位置に対する感度の一様性およびダイナミックレンジの測定を行った。これらX線を用いたCGPCの特性試験からcDNAマイクロアレイスキャナーとしての性能を評価した。
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