研究概要 |
平成14年度は以下の結果を得た。 1)ゲノム・アノテーションのアップデートにより、半数ほどの遺伝子で予測配列が更新された。これに伴って至適なプライマー配列をコンピューターにより再計算し、11000遺伝子についてプライマーを揃えることができた。 2)ESTクローンのない遺伝子についてcDNAプールよりIR-cDNA構築を行う条件設定を行った。機械を導入した高速化によって、現在までに5,500の遺伝子についてIR-cDNAを得た。このうち3,200遺伝子についてはショウジョウバエに導入し、7,000系統を越える変異体を樹立した。 3)これらの系統をAct-GAL4ハエ系統と交配することにより全細胞でRNAiを誘導し、成虫までの発生過程で致死となる遺伝子をスクリーンした。作成した全ての系統で致死となる遺伝子は1617遺伝子(5232系統)中、594遺伝子、また全系統が生存した遺伝子は554遺伝子であった。残りのおよそ1/3の遺伝子では致死と生存の表現型を示す系統が混在していた。このことは、導入した遺伝子の発現に及ぼす染色体位置効果がそれほど極端に影響するわけではないこと、RNAiが非特異的に発生を阻害するわけではないこと、ゲノムにおける致死遺伝子の割合はこれまで推定されていた30%よりも高いことを示唆している。 4)局所的にGAL4を発現する幾つかのGAL4ハエ系統を用い、付属肢、複眼に異常を示す変異体系統をスクリーンしたところ、それぞれ10%程度の変異体で異常表現型が観察された。すなわち、このRNAi変異体系統が形態形成に関与する遺伝子のゲノム網羅的なスクリーンに適用可能であることが判明した。
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