1.ホヤ幼生の神経系に特異的に発現する遺伝子の上流領域のクローニング:カタユウレイボヤのEST配列およびゲノムプロジェクトのデータを用い、約60個の神経系特異的遺伝子の上流領域を含むゲノム配列を収集した。各遺伝子の上流領域(2kb〜4kb)を単離し、それぞれをレポーター遺伝子(GFPとlacZ)につないだプラスミドを順次作製した。 2.遺伝子上流領域-レポーター融合遺伝子のホヤ胚における発現解析:1で得られた上流領域にレポーター遺伝子をつないだ融合遺伝子を電気穿孔法によりホヤ胚に導入して、レポーター遺伝子の発現を調べた。神経系特異的な発現が得られ、細胞タイプ特異的な発現に関わる調節領域をみいだした。 3.遺伝子上流領域の塩基配列の比較解析:単離・同定した各神経系遺伝子のオーソログを近縁種Ciona savignyiで同定し、ゲノム配列の種間比較を行った。その結果、2種は同じ属に分類される近縁種であるにも関わらず、翻訳領域以外の配列は非常に異なっていることが明らかになった。イントロンや上流領域にも種間で部分的に保存された領域がみつかり、これらは重要な転写調節配列と推定される。またこの比較により、これまで困難だった既知遺伝子との相同性がない遺伝子の5'末端の同定が容易になった。発現パターンの共通な遺伝子間で上流領域の配列を比較することにより、神経系特異的な転写に関与するシスエレメントの候補を発見した。遺伝子情報、遺伝子上流領域の塩基配列、シスエレメントの情報、上流領域の機能解析結果のデータベース化を進めた。
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