線虫C.elegansは多細胞生物として最も早く全ゲノムシーケンスが解読され、ESTも整備されているモデル動物である。生活環が約3日と短く、形態、細胞系譜などの生物学的な基本的記載が充実している。線虫を材料に、バイオインフォマティックスを併用した遺伝学的な解析を行うことで発生の分子メカニズムを解明することは、生物学的な理解において極めて有効なアプローチの1つと言える。ゲノムシーケンスに基づく逆遺伝学的なアプローチによるシステマティックな転写因子の変異体の分離を行いつつ、一方で、トランスジェニック解析によりそれらの遺伝子の発現制御と機能を解明することを目的としている。トランスジェニック法による発現・機能解析を効率良く行うために、PCRベースによるプロモーター/エンハンサを簡便かつ確実にサブクローンできる実験系が必要である。これを達成するために、ECFP、EGFP、EYFP、DsRedExpress1を導入したTAクローニング・ベクター・システムを開発した。これらにより、迅速に多数の発現解析を行うことが可能になり、3重染色が容易に可能であることが明らかになった。さらに、PCR SOEing法を用いることにより、イントロン内に存在するエンハンサ配列を含みながら、その遺伝子の機能的蛋白質を発現しないで、より正確に発現制御を行うことができるシスエレメントを蛍光蛋白質の上流にサブクローンすることが可能になった。また、発現解析ができたコンストラクトを元に、蛍光蛋白質を異なる遺伝子のcDNAに置き換えることにより、機能解析にも使用できることが明らかになった。
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