研究概要 |
もっとも特筆すべき成果は,チンパンジー22番染色体(ヒト21番と相同)長腕の全塩基配列を,国際コンソーシアムの一員として決定し,Natureに論文を発表したことである。研究代表者の斎藤成也と分担者の藤山秋佐夫は,ともにこの論文の共著者である。我々が新たに決定したこのチンパンジーのゲノム規模配列とヒトゲノム配列を詳細に比較することにより,タンパク質アミノ酸の違いや塩基の挿入・欠失のパターンの詳細が明らかになった。また,チンパンジーを外群とすることにより,ヒト種内のSNPデータから塩基置換パターンを推定し,GC含量の平衡値がヒトとチンパンジーで異なる方向に向かっていることが示された,などの成果を上げた。 一方,103個のタンパク質コード遺伝子の塩基配列を,ヒト,チンパンジー,ゴリラ,オランウータン4種で比較し,ヒトと類人猿のあいだでの違いを4種類の統計検定を用いて解析した(Kitano et al.,Mol.Biol.Evol.)。その結果,検定法によって有意に違いの出る遺伝子セットが異なっており,明確にヒト特異的な進化をしている遺伝子は発見できなかった。 このほか,類人猿とヒトの遺伝子の比較として,3塩基繰り返し配列を有する8種類の遺伝子の多型解析(Andres et al.,Journal of Molecular Evolution),ユビキチン遺伝子の進化解析(Tachikui et al., Journal of Molecular Evolution),野生チンパンジー集団のミトコンドリアDNA多型解析(Shimada et al., Amer.J.Primatology)を発表した。
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