研究概要 |
もっとも特筆すべき成果は,チンパンジー22番染色体の長腕についてゲノム配列の決定および進化解析を行い,2004年にNatureに論文を発表したことである。斎藤成也と藤山秋佐夫は,ともにこの論文の共著者である。この研究により,ヒト-チンパンジー間のアミノ酸配列,およびゲノム配列の詳細な違いが明らかとなり,特に塩基の挿入・欠失パターンに明確な差異が見いだされた。また,チンパンジーを外群として,ヒト種内のSNPデータから塩基置換パターンの推定を行った。その他の大規模研究としては,チンパンジーのBACライブラリーについて末端配列を決定して、ヒトとチンパンジーのゲノムの違いが1.23%であることを明らかにし(Fujiyama et al.,Science,2002),ゴリラのfosmidライブラリーを作製した(Kim et al.,Genomics,2003)。 一方,103個のタンパク質コード遺伝子の塩基配列を,ヒト,チンパンジー,ゴリラ,オランウータンの4種で比較し(Kitano et al.,Molecular Biology and Evolution,2004),各種統計検定を用いてヒト特異的な変化を発見しようと試みた。しかし、検定法ごとに異なる遺伝子セットが検出される結果となった。上記のほか,類人猿とヒトの遺伝子の比較として,SCA遺伝子における3塩基繰り返し配列の多型解析(Andres et al.,Journal of Molecular Evolution),ユビキチン遺伝子の進化解析(Tachikui et al.,Journal of Molecular Evolution),アフリカ野生チンパンジー集団のミトコンドリアDNA多型解析(Shimada et al.,Amer.J.Primatology)を行った。
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