研究概要 |
昨年度に、収集したベトナムの口唇口蓋裂患者211名とその両親・兄弟などの親類291名を解析の対象として研究を行った。本年度は、日本人の口唇口蓋裂患者と両親のtrioが順次収集されてきたので、それらも、候補遺伝子の変異解析・伝達不平衡テストを行った。昨年度から解析している、RYK(3P),EPHB2,EPHB3の3遺伝子の変異解析を終了できた。これらの3遺伝子はレセプタータイプのチロシンキナーゼであるRYKのシグナル伝達系の現在わかっている細胞表面のコンポーネントであり、ノックアウトマウスにおいて口蓋裂を表現型として示す。RYKに関してはH250R,とY451Cの2つの変異を見いだした。RYKはNIH3T3細胞に導入すると形質転換を引き起こしsoft agar上でコロニーを形成する。この性質を利用し変異が機能喪失を起こすかどうかの解析をcolony formation assayとして行った。解析の結果、H250Rは機能亢進、Y451Cは機能喪失を引き起こし、この2つの変異は単純な多型でなく、口唇口蓋裂の原因である変異と考えられる(論文準備中)。他の、EPHB2,EPHB3については、シークエンス泳動が終了しており、現在順次変異を確認中である。 RYKに関しては、ベトナム人、日本人のtrioを用いて、伝達不平衡テストと相関解析を行ったが、結果は陰性であり、多因子遺伝病としての原因遺伝子ではないと考えられる。 今年度、IRF6遺伝子が、口唇口蓋裂とlip pitを主徴とするVon der Woulde症候群の原因として確定されたので、IRF6遺伝子内の多型部位VI多型を使用し伝達不平衡テストを行った。ベトナム人では、陽性の結果であったが、日本人では陰性であった。IRF6遺伝子は民族間で差があるものの、多因子遺伝病としての原因遺伝子の一つである。
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