研究概要 |
ダイオキシン受容体(AhR)の機能効率を規定するモディファイヤーの存在を明らかにするために,遺伝的背景の違いが,AhR欠損,あるいは,AhR過剰発現による影響に変化を及ぼすかどうかを,以下の2つの実験により調べた. まず,AhR遺伝子破壊マウスを5つの異なる遺伝的背景(129svj, C57BL6,DBA/2,Balb/c, IQI)に戻し交配することにより純系化を図り,それぞれの遺伝的背景におけるAhR欠損による障害を調べた.その結果,出生数や生存率には違いがなかったが,AhR欠損雌マウスにおける排卵数に違いがあることを示唆する結果が得られつつある. 次いで,AhRのPAS-B領域を欠失させることにより,核内に常時存在するようになったAhR constitutive active型分子(AhR CA)を,keratin 14遺伝子のプロモーターにより発現するトランスジェニックマウスを作製した.その結果,表皮においてAhRの標的遺伝子であるCYPlAlが常に発現しており,トランスジーンの高発現ラインでは,皮下に炎症細胞の浸潤を伴う角化の亢進が認められた.当トランスジェニックマウスを,C57BL6,あるいは,DBA/2に戻し交配していったところ,前者に対しておこなったものでは,後者に対して行ったものに比べて,CYPlAlの誘導の増強が観察されたが,皮膚の炎症症状には,あまり顕著な差は認められなかった. 以上の結果から,AhRの機能効率を変化させるモディファイヤーが存在することが示唆された.
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