研究概要 |
2型糖尿病は複数の疾患感受性遺伝子と環境因子が加わって発症する多因子疾患で、その病態はインスリン分泌不全とインスリン抵抗性に大別される。これまでに我々はHNF転写因子カスケードがインスリン分泌に重要であることを明らかにすると共に、内臓脂肪過剰蓄積がインスリン抵抗性の発現に深く関与していることを明らかにしてきた。 本研究はインスリン分泌不全、抵抗性の形成に重要な遺伝子群の解析を行うことにより多因子疾患としての糖尿病の新しい分類体系を確立し、さらにそれに応じた治療法の開発を試みようとするものである。そのためにまず、2型糖尿病患者をインスリン分泌不全・インスリン抵抗性について種々の指標を用いて病態別に分類した。次にHNF転写因子カスケードに属する新規分子としてTRIP3(thyroid hormone receptor interacting protein 3)をyeast two-hybrid法を用いて単離し、その遺伝子構造を明らかにし、遺伝子内に存在するSNPを同定した。またHNF1α,HNF-1β,HNF-4α遺伝子のSNPを多数同定した。また、インスリン抵抗性に関連する分子として、脂肪細胞由来インスリン感受性ホルモンであるadiponectin遺伝子のSNPタイピングも行った。 これらのSNPsの多くは糖尿病患者全体を対照群と比較した場合、その遺伝子頻度に差を認めなかった。このことは2型糖尿病が非常にヘテロな集団であることがその一因であると考えられる。今後は上述した病態別に均一化した群において上記SNPのタイピングを行い、糖尿病の各種病態とSNPの関連について検討し、病態の指標としての分子マーカーを獲得していく。
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