研究概要 |
2型糖尿病は複数の疾患感受性遺伝子と環境因子が加わって発症する多因子疾患であり、その病態はインスリン分泌不全とインスリン抵抗性に大別される。多因子疾患としての糖尿病の発症に関与する遺伝因子を同定する目的で、糖尿病患者を病態別に分類した上で、病態を規定していると考えられる種々の遺伝子多型について検討を行った。入院中の2型糖尿病患者に対して、食事療法・運動療法(必要な場合は速効型インスリンを使用)で血糖を正常化させ、糖毒性による2次的影響を除いた。122名の2型糖尿病患者のインスリン抵抗性(肝インスリン抵抗性はHOMA-IR、末梢インスリン抵抗性はインスリン負荷試験における1/Kで評価)を検討した。その結果、2型糖尿病患者を肝インスリン抵抗性優位群(RL群n=36)、末梢(筋肉・脂肪)インスリン抵抗性優位群(RP群n=13)、両者とも軽度の群(RC群n=73)に分類し得た。肝糖新生の鍵分子であるPGC-1遺伝子のG482S変異について検討を行った。2型糖尿病とコントロールで関連を検討した場合、同多型と糖尿病の間に有意な関連は認められなかったが、RL群においてはG482S変異が有意に増加していた(p=0.0007)。GG, GS, SSアリル別のHOMA-IR値を検討したところ、Sアリルが増加するにつれ、HOMA-IR値が有意に上昇していた(G/G1.8+/-1.0;G/S2.1+/-1.7;S/S2.9+/-1.7,p=0.015)。したがってPGC-1遺伝子のG482S変異は肝におけるインスリン抵抗性の遺伝的リスクである可能性が示された。
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