研究概要 |
細胞性粘菌は生育、分化の各ステージで多様な細胞運動(広義の細胞運動:細胞質分裂、細胞移動、貪食作用、飲作用など細胞形態変化を伴う細胞機能やその前提となる細胞基質間接着、細胞間接着なども含めて考える)を示し、半数体で変異株が使える、タギング法や標的遺伝子破壊など正逆遺伝学的手法に優れるなどの利点から高等動物の細胞運動の最も有力なモデル真核微生物である。本研究は、完了間近のゲノムプロジェクト及び筑波大田中可昌先生らによるESTプロジェクトの配列情報を利用し、上述の広義細胞運動の制御に関わる細胞性粘菌の低分子量GTPase、特にRhoファミリーGTPaseとその制御分子(RhoGDI, RhoGAP, RhoGEF)、さらにエフェクター分子(IQGAPなど)を網羅的に同定し、どの分子が細胞質分裂、どれが貪食作用といった細胞内機能のカタログ化、さらに各機能のシグナルカスケードの解明を目指している。昨年度までにRhoファミリーGTPase自身、RhoGDI、エフェクターIQGAPについて、分子の同定とクローニング、細胞内局在の決定、遺伝子破壊株の解析、酵母two-hybrid法の網羅的相互作用解析によるシグナルカスケードの解明を行った。今年度は、それぞれ少なくとも30種はあるRhoGAPとRhoGEFの解析に着手した。GAPとしてRhoGAP1、GEFとしてミオシンMyoMの尾部にあるGEFドメインを選び、全15種のRhoファミリーGTPaseの野生型、CA型、DN型とのtwo-hybrid相互作用を検討したところ、唯一RhoGAP1とRacF2のCA型との間に特異的相互作用が検出された。これにより、変異型利用の有効性が確認され、網羅的相互作用解析の系が確立した。さらに、RacF2-RhoGAP1系が、生育に必須であり、ゴルジ体に局在して小胞輸送に関わる可能性のあることもわかった。今後、確立した上述の系を用い、すべてのGAPとGEFについて解析を行う。
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