研究概要 |
本研究では、哺乳類における2大受容体遺伝子ファミリーに着目し、これらがいかにして形成され、現在その機能を高度に発揮しているのかを明らかにすることを目的とした。 1)抗原受容体遺伝子 免疫系において抗原受容体遺伝子に見られるV(D)J組み換えは、脊椎動物の進化の過程で偶然挿入されたトランスポゾンの切り出し反応を利用したものと考えられており、実際組換え酵素であるRAGタンパク質によって切り出されたsignal-end(SE)がin vitroではトランスポーズすることが知られている。V(D)J組み換えがトランスポゾンと異なる点は、12/23ルールという組み換え基質の組み合わせによる制約である。本研究では、12/23ルールの分子基盤を明らかにすることを目指し、12/23ルールに従って形成された高次複合体のフットプリント解析を行った。その結果、組み換え反応の進行に伴って、複合体の構造が大きく変化することが明らかとなった。高次複合体のフットプリントは本研究によって初めて示され、12/23ルールを理解するために重要な成果だと考えられる(Nagawa et al. Mol.Cell.Biol.2002)。 2)嗅覚受容体遺伝子 哺乳類には、約千個の嗅覚受容体遺伝子が存在し、個々の嗅神経細胞においてはこれらの中から一種類の受容体遺伝子が選ばれて発現する。本研究では、ヒト及びマウスのゲノムを比較することにより、嗅覚受容体遺伝子が進化の過程で遺伝子変換(gene conversion)を起こしてきた可能性を示すデータを得た。遺伝子変換は嗅覚系の進化を考える上で今後重要なファクターになると考えられる(Nagawa et al. Gene,2002)。
|