研究課題
現在流通している最も典型的なDNAマイクロアレイは、PCR産物をスポットしたタイプである。しかしこのタイプのアレイはi)作製に多大な労力を必要とする、ii)高額である、iii)相同遺伝子間のクロスハイブリダイゼーションの危険性がある、という大きな問題を有している。これらの問題を解決するため、本研究ではオリゴDNAを用いた新規なマイクロアレイの開発を行った。これまで我々はオリゴDNAの精製法と鎖長を至適化することにより大幅なコスト削減に成功している。また、標的以外の遺伝子に70%以上の相同性を示さなければクロスハイブリダイゼーションは起こらないことを実験的に明らかにした。今年度は以上の結果を踏まえて、ゲノム上の全遺伝子について全自動でアレイに最適なオリゴDNAを検索するソフトウェアを開発した。オリゴDNAの選別条件は、i)ゲノムの他の遺伝子に対して70%以上の相同性を示さない、ii)GC含量が35〜55%、iii)A含量が35%以下、iv)分子内で安定な2次構造をとらない(ΔG>-12 kcal/mol)、v)分子間でダイマーを形成しない、の5点とした。i)の条件については、MegaBlastとSmith-Watermanアルゴリズムを併用することにより相同配列を超高感度で比較的高速に検出することが可能である。このソフトウェアを用いて、緑藻クラミドモナスの葉緑体とミトコンドリアゲノムの全遺伝子及び97種の核遺伝子に対して最適オリゴの検索を行った。これらの遺伝子群は大きなGC含量の偏りを示すにも関わらず、約9割の遺伝子について全条件を満たすオリゴが検索できた。さらに検索したオリゴDNAを用いて実際にマイクロアレイを作製し、その性能を検討した。その結果、既存のPCR型クラミドモナスアレイの20分の1のRNA量で十分な強度のシグナルが得られ、高感度であることが示された。また、全く同じRNAを用いてCy3とCy5標識cDNAを合成し、ハイブリダイゼーションを行った結果、総スポットの約95%においてCy5/Cy3のシグナル比が2倍〜1/2倍の範囲内に収まった。このことから定量データの正確性も非常に高いことが示された。
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