研究概要 |
個体発生過程や組織の再構築時にはcadherinを介した細胞間接着のダイナミックな再構築が重要な役割を果たしている。このような細胞間接着の再構築には、空間的位置情報と時間情報が正確に細胞内に伝達、統合され、接着装置が再構築されることが必須である。しかし、その分子メカニズムは長らく不明であった。本研究では細胞間接着の分子基盤をより網羅的に明らかにすることを目的とした。 本年度は細胞間接着を自由に再構築することのできるassay系(Ca2+スイッチ法、およびHepatocyte Growth Factor (HGF)によるcell scattering:細胞分散)を用いて、細胞間接着の各ステージ(接着初期、接着維持期、接着破壊時)に特異的なcadherin, catenins, IQGAP1および低分子量G蛋白質Rhoファミリー結合蛋白質をアフィニティーカラムや免疫沈降により同定した。とりわけIQGAP1結合蛋白質として同定したCLIP-170は微小管のプラス端に濃縮する蛋白質で、IQGAP1はCLIP-170との結合を介して微小管を細胞表層で捕捉することが明らかとなった(Fukata et al., Cell 2002)。IQGAP1はCLIP-170に誘導された微小管を細胞間接着部位にリクルートし、細胞間接着を形成するのに必要な蛋白質やvesicleを輸送する足場を提供している可能性が考えられる。さらに、β-catenin結合蛋白質としてPDZドメインを5個有するスキャフォールディング蛋白質KIAA0705とKIAA0705を介してβ-cateninに結合する蛋白質として低分子量G蛋白質Rap1の活性制御蛋白質PDZ-GEFを同定した。 したがって、本年度の研究計画はほぼ達成することができたと考えている。
|