遺伝子やタンパク質が構成する複数のネットワークの比較を行うツールを開発した。開発の動機は複数のY2H(Yeast Two Hybrid)実験で得られた相互作用のデータの再現性が低いように見えることである。しかしながら、実験毎に、相互作用を起こしたタンパク質の集合の重なりが、相互作用の集合の重なりよりも大きくなっていることがあることに注目した。これは、同一タンパク質間が異なる相互作用パスでつながっている可能性があることを示唆しているものである。本研究で開発・実装した手法は、階層型クラスタリングに基づいてネットワークの比較をすることによって、このようなタンパク質の例を網羅的に探し出すことを行う(処理の一部は並列実行可能)。得られた結果は、タンパク質間の相互作用マップとして描画(EPS形式)することが可能である。例として、公開されている2つのY2H実験の結果を実際に比較した結果、両実験で共通して直接相互作用しているタンパク質のペアの他に、複数のタンパク質を介在として間接的に相互作用しているタンパク質群の例が多数見出された。本手法は、2つのタンパクの1対1の関係について注目したものに加えて、タンパク群の多対多の関係にも注目して一般化していることが特徴の1つである。上記の2つのY2H実験に関してパラメータ(介在タンパク質の数の上限)を変えて処理した結果をデータベース化し、タンパク質の相互作用マップと併せて表示できるようにしたシステムをウェブ上に公開して参照できるようにした。
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