本年度の研究計画に基づいて以下のような研究業績をあげました。 (1)DNAマイクロアレイによる遺伝子発現量測定 DNAマイクロアレイを用いて、大腸菌または酵母に外部より刺激を加えた際の、発現遺伝子量を測定した。刺激により反応が大きく異なり、発現量が大きな遺伝子の中には機能未知なものが含まれていることも観察できた。 (2)適応共鳴理論(ART)による発現遺伝子のグループ化(クラスタリング) 時系列マイクロアレイデータに対して、従来から行われている統計的手法の階層的クラスタリング、k平均アルゴリズム、自己組織化ネットワークと今回あらたに適用するART(適用共鳴理論:知識情報処理手法の一つ)による解析を行った。これらの手法を先のデータに適応したところ、生化学的知見に基づく結果に最も近い結果が得られたのは、ARTであった。 機能既知の45種類の遺伝子に対する時系列マイクロアレイデータをARTによってクラスタリングを行い、5つのクラスターを得た。その後、このクラスタリング結果に追加する形で、他の遺伝子の時系列データのクラスタリングを行ったところ、よく似た時系列パターンのクラスターが存在する際にはそのクラスターに追加分類され、よく似た時系列パターンのクラスターが存在しない場合は、新しいクラスターを形成した。この結果、機能既知の遺伝子を生化学的知見に基づきながらクラスタリングを行い、その後機能未知の遺伝子のクラスタリングを行うことによって、生化学的知見を取り入れたクラスタリングの可能性が示唆された。他の従来からの手法では、このような分類は不可能であった。 機能既知の45遺伝子のクラスタリングをARTで行った結果、生化学的知見から考えてうまく分類できていない遺伝子が、数種類存在したが、その数種類の遺伝子に関してさらなる生化学的な調査を行った。その結果、別の生化学的実験から、ARTの結果を支持するような結果が得られた。このため、ARTは発現遺伝子のクラスタリングの強力なツールであると考えられた。
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