我々がまず始めに骨格筋で見い出したジャンクトフィリンは、表層膜と結合し筋小胞体膜を貫通することにより結合膜構造の形成に寄与するものと考えられている。その後心臓に特異的な2型、脳に特異的な3型が同定されジャンクトフィリンは骨格筋のみならず、興奮性細胞系全般の結合膜構造の形成や機能にかかわっていることが示唆された。脳に特異的な3型ジャンクトフィリンは、2型ハンチントン乱舞病の原因遺伝子として最近同定され注目されている。変異解析において数種の遺伝病家系が報告されたが、triplet repeatの挿入変異による3型ジャンクトフィリンの機能的にnull変異となるものも存在する。そこで、3型ジャンクトフィリンの生理的機能や乱舞症状との関連解析をめざし、ノックアウトマウスを作製した。3型ジャンクトフィリンノックアウトマウスは顕著な表現型の異常は観察されず、脳の解剖学的所見も正常であった。しかし、行動学的実験より運動協調性の低下が観察され、中枢系での3型ジャンクトフィリンの重要性が示唆された。現在、運動協調性の低下の原因となる脳内部位は不明であるが、ヒト2型ハンチントン病のモデルマウスとして、3型ジャンクトフィリン欠損マウスの有用性が示唆される。
|