我々は運動神経をモデル系とし、その経路選択・標的認識機構を、こうした過程に関与しうる因子を探索し解析することから明らかにしていこうとしている。こうして新たに単離されたFY29は、LMCmニューロンに選択的に発現が見られ、完全長cDNAの単離から、複数のIg domainをもつ未解析の分泌性様タンパクをコードしていることが明らかとなった。FY29は発生初期にはnotochordやfloor plaleといった、神経管の背腹軸形成や軸索経路選択においてsignaling centerとしての役割を果たしている細胞群に発現しており、その後、運動神経が四肢へ軸索を伸長し始めるHH stage 23以降の胸部LMCmニューロンに選択的な発現が認められる。また興味深いことに、投射先である四肢の間充織細胞において、表在神経系が分岐するごく近傍の領域にも発現が観察された。ついで、FY29が分泌性様の因子であることから、FY29のアルカリフォスファターゼ融合タンパクをニワトリ胚切片に反応させて、これが作用し得る部位を検証した。その結果、FY29は軸索の存在する領域に選択的に結合することが明らかとなった。また、explant cultureを利用した解析から、神経軸索のfasciculationに影響を与えることが示唆された。そこで、in ovo electroporation法により、FY29をニワトリ胚の神経管と後根神経節において強制発現さたところ、FY29を発現した神経の走行経路の一部に異常が観察された。これらの結果から、FY29は運動神経をはじめとする神経群の走行の調節に関与する、新しいaxon guidance活性を持つ因子であることが推測された。
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