目的及び背景:脊髄小脳失調症6型(SCA6)は、多くの神経変性疾患の中でもその原因遺伝子機能が判明している数少ないものの一つであり病態解明に至る可能性が高く、進行性変性症の他発作性症候も呈するなど多彩な神経障害を来たしその機序の解明は科学的インパクトが大きい。またSCA6は本邦に多くニーズも大きい。我々は第19番染色体連鎖小脳失調症を同定、それがSCA6と同一であることやCAGリピート伸長の病的意義を明らかにし、SCA6のプルキンエ細胞質内封入体を発見、Caチャンネル権能の異常を初めて報告するなど一連の研究を続けている。本研究の目的は、培養細胞ならびに動物モデルを作製してα1A-Caチャンネル遺伝子(CACNA1A)の変異による脳細胞変性と機能障害の分子病態を解明することである。 方法:まず、これまで用いていたHEK細胞にてSCA6遺伝子を導入し、細胞死を生じる条件を検索し、そのメカニズムを探る。また、変異lox配列をマウスcacnalaエクソン1に導入したES細胞を単離し、変異lox配列、CAGの異常伸長したヒトCACNA1Aの全長cDNA、およびハイグロイマイシン耐性遺伝子を組み込んだノックインベクターとCreリコンビナーゼの発現ベクターとを同時に導入し、マウスcanalaエクソン1にSCA6変異を持つヒトCACNA1AcDNAを挿入した。予想されるパターンでのcDNAの挿入はサザンハイブリダイゼーションとPCR法により確認した。SCA6の変異CACNA1Aを有するES細胞を多数得て胚盤胞へ移植しSCA6のノックインマウスを得る。 結果と考察:HEK細胞にてSCA6遺伝子変異を導入して細胞死を生じさせることに成功し、その時に変異蛋白が断片化していることを明らかにした。また、SCA6のノックインマウスを得ることに成功し、現在症候、チャンネル機能障害、神経病理所見などの表現型の解析を行っている。
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