本研究ではP/Q型Caチャネルをコードするalpha1A遺伝子の変異に起因する発作性失調症2型(以下EA2)のモデルマウスを作製し、それを用いてEA2発症機序の解明およびその遺伝子治療法の開発を目的とする。 昨年度作製したEA2ノックインマウスおよび、その導入遺伝子にさらに改変を加えたマウスを用いて、導入したヒトalpha1Aの脳内における発現を検討した。その結果、導入したヒトalpha1A cDNAの発現量はこの2種類のマウスで10倍程度異なることが判明した。現在、これらのマウスの行動学的解析を現在すすめており、EA2モデルとしての評価を行っている。 その一方で、遺伝子治療の一つの方法としてRNA/DNAキメラオリゴヌクレオチド(以下RDOと略)の利用を試みた。現在までに種々の細胞種でいろいろな遺伝子にRDOにより点変異を導入できることが知られているが、神経系細胞でもこの手法が適用できるかは明確ではない。そこで予備的な実験としてマウスの自然発生突然変異系統leaner(laと略、マウスalpha1A遺伝子の中のあるスプライスドナー部分に点変異をもち、alpha1A遺伝子のノックアウトマウスに似た症状を示す)の小脳にポリエチレンイミンを用いてRDOを導入することを試みた。その結果、通常なら3-4週齢で死亡してしまうlaホモ接合体の中に数カ月以上生き延びる個体が観察され、RDOによる遺伝子治療が有効である可能性が示唆された。現在初代培養マウス小脳顆粒細胞にRDOを導入し、実際に遺伝子修復が起きているのか、および、もしそうならどれくらいの頻度でおこるものかをRT-PCRやgenomic DNAに対するPCRにより検討している。
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