研究概要 |
第1に、MPTPの活性型であるMPP+によるドーパミンニューロン死において、封入体形成とドーパミンニューロン死との関係を検討した。胎仔ラット腹側中脳由来の初代培養系では、MPP+誘発神経細胞死の過程で、細胞質内に一過性のユビキチン陽性顆粒が観察され、プロテアソーム活性の上昇が認められた。選択的阻害剤によりプロテアソーム活性を抑制すると、少数ながらドーパミンニューロン内にαシヌクレイン陽性の封入体が形成された。一方、プロテアソーム阻害薬はMPP+誘発神経細胞死を拮抗した。これらの点から、(1)プロテアソーム活性の低下は封入体形成に重要な役割を果たしている一方で、(2)ドーパミンニューロン死に対してはむしろ細胞死を抑制する作用のあることが示唆された。プロテアソームで分解されるshort-lived proteinのうち、アポトーシス関連分子および細胞内シグナル分子について検討した。その結果P42およびP44-mitogen activator protein kinase(MAPK)がMPP+処置後に脱リン酸化され、プロテアソーム阻害薬がこの脱リン酸化を拮抗することを見いだした。 第2に、ラットC6グリオーマ細胞にヒトαsynuclein(野生型,変異型)を過剰発現させた系を確立し,その系を用いてBDNFの誘導について検討した。ヒト野生型αsynucleinを過剰発現させたcloneでのみBDNF mRNAの発現が増加し、蛋白レベルでも産生・分泌は増加していた。変異型αsynucleinを導入したcloneではBDNF mRNA、蛋白レベル共に上昇は認めなかった。野生型αsynucleinは細胞内カルシウム依存性にグリア細胞にBDNFを誘導・産生する機能を持ち,神経細胞保護的な機能を持つ可能性が示唆された。
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