研究課題
ニーマン・ピック病C型は細胞内脂質小胞輸送に関与するNPC1分子の遺伝的欠陥によって生じる疾患である。細胞内脂質輸送の欠陥によって、神経細胞内にガングリオシッドなどの糖脂質とコレステロールの蓄積とともに、神経細胞の膨化、スフェロイド形成、神経原線維性変化、プルキンエ細胞の脱落を示す。ニーマン・ピック病C型患者線維芽細胞と正常線維芽細胞の遺伝子発現を検討し、以下の結果を得た。1.NPC細胞で発現の亢進している遺伝子をMicroarrayでスクリーニングし、ISRE (intereferon-stimulated response element)により誘導される遺伝子群により誘導される一連の遺伝子が増加していることを見いだした。2.1.の生化学的機序を解明するため、STATの発現を検討し、ヒトNPC細胞でSTAT1〜STAT6のレベルの増加が見られ、同様に我々が分離したNPC1欠損CHO細胞でもSTAT1、STAT3〜6の増加が見られた。培養細胞ではリン酸化STAT1が増加し、STAT1は核内に移行し、活性化されていることを確認した。NPC1欠損マウスの肝臓、脳のlysateでもSTAT1、STAT3〜STAT6の発現亢進を認めた。特に、変性脱落する視床神経細胞、プルキンエ細胞にSTAT3の抗原性が増加し、神経細胞変性とこのシグナル異常が関与していると考えるに至った。一方、インターフェロンαやγの受容体蛋白質レベル、Tyk2やJAK2蛋白質のレベルには変化がなかった。3.2.の生化学的機序を解明するため、NPC細胞と正常細胞それぞれの培養上清による刺激実験を行ったところ、NPC細胞の培養上清中に、MxAやSTAT1の発現レベルを亢進させる活性物質が存在することを見いだし、それらがIL-6、IL-8、未同定のサイトカインであることが明らかになった。さらにReporter gene assayおよび抗体による中和実験で、STAT3を上昇させるサイトカインはIL-6であることが明らかになった。
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