1.フェロモン記憶の電気生理学的相関:副嗅球のスライス標本を用いて、僧帽細胞から顆粒細胞への興奮性シナプス伝達に入力特異的に長期増強(LTP)が誘導される。このLTPはNMDA受容体依存性に成立し、ノルアドレナリン(NA)により促進された。1982年に記憶形成におけるNAの関与が証明されたのであるが、そのメカニズムは不明のまま約20年の歳月が流れた。本研究で我々は、LTPにおけるNAの作用メカニズムを明らかにした。すなわち、NAはα_2受容体を介してLTP誘導を促進することが判明した。 2.幼若ラットにおける匂い学習の分子メカニズム:副嗅球の働きで成立するフェロモン記憶の特性を充分に理解するためには、シナプスと分子の両レベルのメカニズムに関して、主嗅球の働きで成立する記憶学習と何が同じで、何が異なるかを知ることが非常に重要である。この観点に立って我々は、比較研究の優れたモデル系として幼若ラットにおける匂い学習を解析してきた。この匂い学習成立にMAPK/ERKなどのタンパク質キナーゼ、CREBの発現とそのリン酸化が関わることを明らかにした。
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