歯状核赤核・淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)の病因は患者のDRPLA遺伝子のCAGリピート(ポリグルタミンをコード)の異常伸長が異常蛋白の核内集積、転写障害を引き起こし、機能異常をもたらすと考えられている。我々は伸長した変異DRPLA遺伝子(129リピート)を導入したトランスジェニックマウス(Q129)から得られた脳切片を用いてDRPLAの病態生理を電気生理学的に検討した。Q129は脳全体が萎縮してんかんの重積発作を示すため、まず12-14週齢の海馬のシナプス伝達機能を調べた。その結果、興奮性シナプス後電流(EPSC)の減弱とNMDA/AMPA比やpaired pulse ratioの増大、AMPA受容体、GABA受容体の減少、spineの減少が観察された。シナプス伝達の長期増強現象には強い刺激条件下では有意差は認められなかったが、サンプル数が足りないので結論に至らなかった。次に、症状出現以前の4週齢の淡蒼球を調べた。ここではpaired pulse ratioの著明な低下が見られた。他の所見には異常は認められなかった。一見矛盾する結果であるが、逆に、以上の結果はシナプス前における細胞内カルシウムのhomeostasisの異常を示すもので、このことがDRPLA症状発現の原因のひとつと考えられた。
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