人間と共生する機械を実現するためには、システムがユーザのモデルを知覚し、それに応じて適応的に行動することが重要であると考えられる。本研究では、音声対話によるインタフェースにおいて、協調的な応答を生成するためのユーザモデルについて検討した。 ユーザモデルの研究はこれまで、主として自然言語対話システムにおいてユーザの知識に重点をおいて行われてきた。これに対して音声対話システムでは、バージイン、応答までの時間など、テキストには含まれないがユーザの特徴を反映する情報が多く存在する。本研究ではこれらの特徴を考慮に入れながら、包括的なモデルを構成した。すなわち、システムに対する習熟度、タスクドメインに関する知識レベル、性急度の3つのユーザモデルを導入し、それに応じた対話制御を検討した。具体的には、習熟度の低いユーザに対しては、単語発話を誘導する質問を行うことや、質問を行う際に答え方の説明を付加するという対話戦略をとる。知識レベルの低いユーザに対しては、提示する情報を絞った上で、それについての説明を付加する。性急度の高いユーザに対しては最低限の入出力を行うという戦略をとる。 現在我々が開発中の京都市バス運行情報案内システム(音声ポケロケ:075-326-3116)において、これらのモデルの判別方法の決定木学習・対話戦略の実装を行い、予備的評価を行った。
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