研究概要 |
これまでに用いられてきた遺伝子欠損マウスは、複数のマウス系統の遺伝的背景を持つものであったことから、C57BL/6Jを遺伝的背景とするSR-AI/IIおよびLox-1遺伝子欠損マウスとして利用可能とし、より再現性の高い実験成績を得る材料を準備するとともに、これら2つの遺伝子についてのダブルノックアウトマウスを樹立した。 SR-AI/II欠損マウスに対するTrypanosoma congolense (5000 cells)の腹腔内投与による生存率には、野生型マウスとの差異は観察されなかった。また、Lox-1欠損マウスに対するBabesia rodhaini (10,000 IRBC)感染後の生存率には野生型マウスとの間に差は認められなかったが、パラシテミアのより早期かつ急速に上昇する傾向およびヘマトクリット値の有意な減少が観察された。また、Lox-1欠損マウスに対するBabesia microti (1x10^7 IRBC)の感染においては、野生型マウスでは2峰性のパラシテミアのピークを示すのに対し、Lox-1欠損マウスでは3峰性に推移することが観察さた。尚、ヘマトクリット値の推移には野生型マウスとの差を認められなかった。 また、トキソプラズマの感染動態をより詳細に観察することを可能とするために、Toxoplasma gondii PLKにGFP遺伝子を導入したトランスジェニック原虫を樹立し、このT.gondii PLK-GFPが、野生型と同等な病原性を有することを確認すると共に、感染動物由来のタキゾイトおよび脳シスト由来のブラディゾイトにおいてGFP蛋白を発現していることを確認した。 今回、マラリアと同様に赤血球に寄生するバベシア原虫の感染実験において、Lox-1のこの原虫感染症への関与を示唆する成績が得られた。
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