研究課題
赤痢菌の上皮細胞侵入には、菌のIII型分泌装置(TTSS)を通じて上皮細胞へ分泌されるIpgB1がRhoG機能を代行してELMO-Dock180を活性化し、これによりRac1の活性化が起こることが重要であることを見いだした。また細胞質内で赤痢菌は菌体の一極にVirGを集積し、VirG-N-WASP-Arp2/3複合体を形成する。赤痢菌の細胞内運動は、virG遺伝子を欠損させると完全に消失するが、野生株でも微小管(MT)ネットワークにより運動性が著しく妨げられ、MTによる運動阻害はvirA変異株でさらに増大することを見いだした。電子顕微鏡および共焦点顕微鏡で細胞内の赤痢菌を観察した結果、赤痢菌はTTSSを通じて分泌されるVirAのMT崩壊活性を利用して周囲のMTを切断しつつ運動していることが示唆された。VirAのMT崩壊活性を調べる目的で、精製したVirAとα-チュブリンおよびβ-チュブリンを混和したところ、VirAの量依存的にα-チュブリンのみが切断された。VirAのモチーフ検索および一アミノ酸置換変異体の解析により、VirAはパパインに代表されるClan CAのメンバーに類似するシステインプロテアーゼの一種であることが明らかとなった。さらに菌のTTSSから分泌されるIpaBは宿主細胞の核内へ移行して細胞周期を抑制することを見いだした。核内でIpgB1は細胞周期調節に関わるAPC/C-Cdh1を負に抑制するMad2Bへ結合した。IpaB-Mad2B結合をサイクリンB1崩壊およびユビキチン化アッセイ法で精査した結果、APC/C-Cdh1依存的なサイクリンB1の崩壊が認められた。Mad2Bへの結合に必須なIpaBの61番目のアスパラギンをアラニンへ置換した変異体は、サイクリンB1の崩壊および細胞周期抑制性が消失するとともに、腸管上皮前駆体細胞に対する増殖抑制も回復した。
すべて 2006 2005
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