インフルエンザウイルスは8本に分節したRNAをゲノムとし、それらは球状、フィラメント状、あるいはいびつな形状をしたウイルス粒子内に存在する。ところが8本のRNA分節がウイルス粒子内に取り込まれるメカニズム、すなわちランダムに取り込まれるのか、それとも特異的なメカニズムによって取り込まれるのかについては、ほとんどわかっていない。我々は昨年までに、NA RNA分節が効率良く取り込まれるにはNA蛋白質のコード領域が必要であり、特にウイルスRNAの3'側21塩基が重要であることを明らかにした。 今年度はHA遺伝子のウイルス粒子内への取り込みに重要なRNA領域について調べた。HA蛋白質のコード領域の中間部分を取り除いた欠損HA RNA分節にGFP遺伝子を挿入したキメラHA RNA分節を作製し、これを元に一部残存しているコード領域の両端を順次欠損させたキメラHA RNA分節を作製した。このキメラHA RNA分節を持つウイルスをリバース・ジェネティクス法により作出し、キメラHA RNA分節がウイルス粒子内に取り込まれる割合を調べた。その結果、HA RNA分節が効率良く取り込まれるには、NA RNA分節と同様にHA蛋白質のコード領域が必要であり、特にウイルスRNAの3'側9塩基と5'側80塩基が重要であることが明らかになった。 以上の成績は、NAおよびHA分節がウイルス粒子内へ取り込まれるためにはそれぞれのコード領域が重要であることから、各分節に独特のパッケージング・シグナルが存在することが考えられる。すなわち、8本のRNA分節がウイルス粒子内に取り込まれる際には、ランダムではなく、特異的なメカニズムが存在することを示している。
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