研究課題/領域番号 |
14021014
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
北 潔 東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (90134444)
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研究分担者 |
網野 比佐子 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (10323601)
三芳 秀人 京都大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (20190829)
鳥居 本美 愛媛大学, 医学部, 教授 (20164072)
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キーワード | マラリア / ミトコンドリア / 呼吸鎖 / 複合体II / 薬剤開発 / 低酸素適応 / コハク酸脱水素酵素 |
研究概要 |
本研究では寄生適応に必須な基本要素である各種代謝系のなかでも特にエネルギー代謝系に焦点を絞り、マラリア原虫ミトコンドリア電子伝達系の特異性を解析することにより、最終的に化学療法の標的として捉えたいと考えている。最近、活性を保持したミトコンドリアの単離法を確立し、これまで不可能とされていた生化学的アプローチを可能にした成果をふまえ、熱帯熱マラリア原虫におけるエネルギー代謝系を先端的なエネルギー転換系研究の視点から追求し、細胞質とオルガネラの協調的役割、また生活環におけるその変動を解析しマラリア原虫、ひいては寄生現象全般に共通する適応戦略の分子基盤とその多様性を明らかにする事を目的としている。本年度は以下の成果をあげる事ができた。 1.マラリア原虫複合体II(コハク酸脱水素酵素複合体)の酵素学的性質:複合体IIはTCA回路の酵素であると同時に呼吸鎖の脱水素酵素であり、両者を直接結ぶ重要な酵素である。また、ミトコンドリアのマーカー酵素としても知られている。これまでに他の寄生虫ミトコンドリア複合体IIを阻害する事が判明しているアトペニン、フルトラニルなどの阻害剤に対する感受性が大きく異なっている事が明らかになった。 2.マラリア原虫複合体IIの細胞内局在:現在解析に用いているマラリア原虫ミトコンドリアは他のオルガネラや細胞膜を含み、その純度は低い。そこで、さらにその精製を試みた結果、パーコールによる分離法を確立した。ミトコンドリアのマーカー酵素である複合体IIはこの画分にのみ局在し、またアピコプラストなどは含まれていなかった。 3.マラリア原虫DHODH(ジヒドロオロト酸脱水素酵素)の酵素学的性質:通常、ピリミジン合成系の第4酵素であるDHODHはその還元力を呼吸鎖に伝達している。本酵素からの電子伝達系をミトコンドリアを用いて解析した結果、マラリア原虫ミトコンドリアにはDHODH、ユビキノン、複合体III、シトクロムcと言う電子伝達系が存在し、高い活性を示す事が判った。さらにDHOD-シトクロムc還元酵素に対する阻害効果を調べる事によって、複合体IIIの特異的阻害剤をスクリーニングできる事が明らかになった。
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