研究概要 |
HIVの感染初期過程におけるインテグラーゼの役割として、ウイルスゲノムの組み込みに加え、脱殻、逆転写、核内輸送にも関与する可能性を示してきた。本研究では、in vitroの核移行アッセイ、Pull-downアッセイ、yeast-two hybrid法によりHIV-1インテグラーゼの核内移行能には中央ドメイン(51-210)とC-末端ドメイン(211-288)が重要であることを明らかにした。また、C-末端ドメインの核内移行はimportin α/βを介した古典的経路の関与、中央ドメインの核内移行機能にはimoprtin α/β以外の細胞性因子の関与あるいは直接、核膜孔に結合し、エネルギー依存的に核膜孔を通過する可能性が示唆された。さらに、インテグラーゼと相互作用する細胞性因子としてRch-1, transportin, HSP70を同定した。こうした因子のHIV複製における機能を調べるため、アンチセンス、およびRNAiの手法を用い、関連因子の欠損細胞株の樹立をおこなっている。また、インテグラーゼ変異体のウイルス性状解析から、_<142>PYNP_<145>モチーフおよび156、159、160位のリジン残基はウイルスゲノム認識に関与するものと考えられた。以上、ウイルスゲノムの核内移行には、インテグラーゼの核移行関連ドメインとウイルスゲノム認識ドメインの両者が重要であることが示唆された。今後は、インテグラーゼ蛋白のウイルスゲノムおよび宿主因子との相互作用ドメインを同定し、新たな抗ウイルス剤の開発の一助としたい。
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