研究概要 |
HIVは主として経粘膜感染により蔓延しており、ウイルスの粘膜感染機序と粘膜防御機構の解明は、その予防法を探る上で重要である。本研究では、SHIV(およびSIV)感染ザルを用いて特に感染初期のウイルス増殖機序と免疫誘導機構の解析に焦点を絞り、次の2研究を実施した。 1,SIVのカニクイザル経膣感染過程におけるウイルスポピュレーションの制限とウイルスの細胞指向性。 粘膜を介したウイルスの感染機序の解明を目的とし、SIVの粘膜感染初期過程における血液中および生殖器内のウイルスポピュレーションの変化を解析した。さらに、粘膜組織内に多数存在する樹状細胞(DC)やマクロファージ(Mφ)におけるウイルス増殖と粘膜感染性との関連を検討した。 その結果、ウイルスの経粘膜通過の過程でウイルスポピュレーションに制限が加わることが明らかになり、粘膜になんらかのバリアーが存在しているものと考えられた。しかしMφやDCへのウイルスの細胞指向性が粘膜感染性を決定するうえで必ずしも重要ではないと考えられた。 2,強毒SHIVのアカゲザル経直腸感染初期のウイルスと免疫細胞の動態 強毒株SHIV-89.6p由来の分子クローンSHIV-C2/1株(2×10^3TCID_<50>)を直腸経路から感染させ、感染後3d、6d、13d、27dにそれぞれ2頭ずつsacrificeして生体内のウイルス動態と宿主応答を経時的に解析した。その結果、強毒SHIVの経直腸感染により、早期の直腸・胸腺の感染増殖と全身への拡大がみられた。現在、その拡大様式を各種臓器におけるプロウイルス量と感染性ウイルス量から詳細に検討している。また、末梢血や全身リンパ臓器内のCD4細胞の減少に先立って、腸管リンパ球中のCD4^+CD8^+T細胞を主とするCD4^+細胞の減少がみられたことは、早期の胸腺におけるCD4^+細胞の減少とともに注目される。
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