研究概要 |
われわれはToll-like receptorを介した細胞内シグナル伝達について解析してきた。TLRファミリーは細胞質内に保存されたTIRドメインを介してアダプター分子のMyD88と結合し炎症性サイトカインの産生を誘導する。しかし、TLR3やTLR4を介したシグナルでは転写因子IRF-3の活性化しIFN-βの産生を誘導するMyD88非依存的経路が存在することが解った。TIRドメインを持つ第二のアダプターTIRAPが同定されたが、ノックアウトマウスの解析から、TLR2とTLR4を介したMyD88依存的経路に関与していることが明らかになった。そこで、TLR3とTLR4を介したMyD88非依存性のシグナル伝達にもTIRドメインを有する分子が関与するのではないかと予想し、データベース検索から第3のアダプターのTRIFを同定した。TRIFは過剰発現系によりIFN-β遺伝子のプロモーターの活性化を誘導した。今年度は、TRIFのノックアウトマウスを作製し、その生理機能を解析した。TRIFノックアウトマウスでは、TLR3,TLR4刺激によるIFN-β、IFN誘導性遺伝子の発現が顕著に障害され、転写因子IRF-3の活性化も全く認めなかった。これらの結果から、TRIFがTLR3,TLR4を介したMyD88非依存性のシグナルに必須の役割を担っていることが明らかになった。さらにin vitroの実験からTRIFがIRF3をリン酸化するTBK1とTRAF6に結合し活性化することを示した。さらにTIRドメインを持つ第4のアダプターのTRAMを同定した。TRAMのノックアウトマウスを作製し解析したところ、TRAMがTLR3のシグナルには関与せず、TLR4を介するMyD88非依存的経路に特異的に関わることを明らかにした。
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