自然免疫におけるToll-like receptor (TLR)ファミリー分子の機能とそのシグナル伝達機構について解析してきた。個々のTLRはそれぞれ特異的な病原体構成成分を認識し、MyD88などのアダプター分子を介して細胞内シグナル伝達系路を活性化する。これらTLRノックアウトマウスの解析からTLR7がウイルス由来一本鎖RNAを、TLR9が細菌やウイルス由来DNAを認識する事が明らかとなってきた。更にこれらTLRのリガンドを検索し、TLR9が核酸のみでなくマラリアによる宿主ヘモグロビン代謝産物であるヘモゾインの認識にも必須である事を明らかにした。ヘモゾインは宿主の免疫系を活性化させるがこの活性化はTLR9やMyD88ノックアウトマウスにおいて消失していた。我々はこれらのTLRのシグナル伝達系路に関しても更に検討を行った。TLR7やTLR9の刺激はプラズマサイトイド樹状細胞においてI型インターフェロン(IFN)を産生させる事が知られているがそのメカニズムに関してはよく知られていなかった。MyD88からのシグナル伝達系路を検索し、MyD88がI型IFN発現に重要な転写因子であるIFN-regulatory factor 7 (IRF7)と直接結合しI型IFN産生を制御している事を明らかにした。MyD88はIRF3には結合せず、これらのTLR刺激によるI型IFN産生はIRF3活性化に必要なキナーゼ群、IKK-i/TBK1に非依存的であった。これに対し、IKK-i/TBK1ノックアウトマウスを用いた解析からこれらの分子が線維芽細胞においてウイルス感染におけるI型IFN産生に必須の役割をしている事を明らかにした。TLR刺激に対しIFN以外に炎症性サイトカインの産生が強く誘導される。その発現には転写因子NF-κBの活性化が重要なことが知られている。今回、TLR刺激で早期に強く誘導されNF-kBp50サブユニットに結合する分子、IkBζのノックアウトマウスを作製し、この分子がTLR刺激におけるIL-6誘導に必須の役割を果たしている事を明らかにした。このようにTLRが様々なシグナル分子を活性化し免疫反応を制御している事が明らかとなった。
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