膜融合リポソームは、細胞膜との融合によりリポソーム内封物を細胞質内に直接導入できる。そこで、サブユニットワクチンとしてモデル抗原(ニワトリ卵白アルブミン:OVA)を膜融合リポソームに封入し、免疫した際の抗原特異的免疫応答について検討した。その結果、膜融合リポソーム内に封入した抗原が抗原提示細胞の細胞質内に導入され、その抗原がMHC class I分子を介して抗原提示されることを確認した。さらに膜融合リポソームの作製に用いているセンダイウイルスが本来気道粘膜に感染するウイルスであることから、膜融合リポソームは経鼻ワクチンとして用いた際に、高い抗原送達能を示し、その結果粘膜面と全身面の両部位において抗原特異的CTLならびに抗体産生が誘導出来ることを確認した。本結果は、膜融合活性の無いリポソームを用いた場合には認められなかったことから、膜融合リポソーム内に封入された抗原蛋白質が直接細胞質内へ導入された結果によるものと思われる。さらに不活化エイズウイルス粒子の細胞質内導入による効果的なCTL誘導を目指し、膜融合リポソーム内へのモデル粒子の封入ならびに細胞質内へのその粒子導入について検討した。その結果、凍結乾燥空リポソーム法を用いることで、モデル粒子であるナノパーティクルをリポソームさらには膜融合リポソーム内に封入出来ることを明らかにした。さらに、そのナノパーティクル封入膜融合リポソームを用いることにより、エンドサイトーシス非依存的に細胞質内に効率よくナノパーティクルを導入出来ることを示した。今後この技術を用いて不活化エイズウイルス粒子を封入した膜融合リポソームが作製できれば、不活化エイズウイルスの弱点を克服できる、即ち不活化エイズウイルスであってもCTL、抗体産生の誘導が可能な安全性の高い新規ワクチン療法が確立できるものと期待される。
|