研究課題
マラリアの惨状はますます深刻化しており、これを看過することはできない。本研究は新しい抗マラリア薬のリード化合物の決定・最適化を行い、コンピュータドラッグデザイン、ゲノム創薬、及びハイスループット法を駆使して新規抗マラリア薬を開発し、マラリアの流行地にそれを供給する事を最終目的とする。また、本研究は薬剤耐性マラリアの耐性機構の解明とそれに基づく分子設計により、薬剤耐性を克服できる抗マラリア薬の創製を目指し、且つ寄生原虫感染症学の分子基盤を確立しマラリア制圧に寄与するものである。今年度の研究成果を下記に述べる。(1)熱帯熱マラリア原虫のHeat Shock Protein(HSP90)を標的とする抗マラリア薬の開発研究でHSP90阻害剤であるゲルダナマイシン、およびその誘導体である17-AAGが優れた抗マラリア活性を示すことがわかった。これら化合物をメフロキン耐性熱帯熱マラリア原虫に併用したところ、メフロキン耐性の熱帯熱マラリア原虫がメフロキンに40倍もの感受性化することを見いだした。現在、メフロキン耐性機構とHSP90に関わる因子の同定を行っている。(2)我々が1999年に見出した1,2,4,5-テトラキオキサシクロアルカン類化合物は高い選択毒性と優れた抗マラリア活性を示し、次世代の抗マラリア薬となり得る性質を有する。今年度はN-89を大量合成するための合成法の改良を行い、10gのN-89を合成することができた。現在マウスに対する一般毒性の評価を行っている。この環状過酸化誘導体のアミノ残基を用いてアズルラクトン基と結合したアフィニティカラムを作成し、マラリア原虫の粗たんぱく質と反応したところ、環状過酸化化合物に特異的に結合するマラリア原虫たんぱく質を単離できる実験方法を確立した。現在、たんぱく質のスポット解析のための実験を行っている。(3)N-89耐性熱帯熱マラリア原虫株の樹立を行い、1×10^<-7>Mの濃度でも成長できる熱帯熱マラリア原虫株をクローニングにより獲得した。この熱帯熱マラリア原虫株は既存抗マラリア薬・アルテミシニンに対しても耐性を示した。他の抗マラリア薬の耐性有無に関しても現在解析を行っている。(4)N-89化合物をマラリアの注射薬として開発するため、溶剤の検討を行った。その結果、10% Cremophorで溶解したN-89はマウスに毒性を示さず、ネズミマラリア原虫感染マウスの血中原虫を投与12時間目から急激に減少させ、マウスを全数完治させる能力があることがわかった。また、血中感染率を最大30%まであげたマウスに対しても完治には至らなかったものの血中マラリア原虫を急激に減少させる薬効(感染率:<0.01%)を有することがわかった。
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