自己免疫と真菌の認識・感染成立機構の両者に働くAIRE遺伝子の分子動態を詳細に解析する目的で、本年度は蛍光蛋白GFPとAIRE cDNAとの融合遺伝子を構築し、HeLa細胞に導入したstable transfectant(GFP-AIRE/HeLa)細胞株を樹立して研究を行った。GFP-AIRE/HeLaを蛍光顕微鏡下に観察したところ、予想通りnuclear bodyの形成を認めた。細胞分画蛋白を用いたウエスタン・ブロットにより、AIRE遺伝子産物が種々の転写因子が存在するnuclear matrixに存在することが明らかになった。また、GFP-AIRE/HeLaにプロテアソーム・インヒビターを作用させるとGFP-AIREの発現増強と核小体への集積が観察された。以上から、AIREはnuclear matrixで転写調節因子として機能し、また、プロテアソーム系の作用を受けながら、免疫系における自己・非自己の識別機構にはたらくことが示唆された。AIRE遺伝子産物が、どのようなメカニズムにより自己寛容の確立と真菌に対する感染防御にはたらくかを明らかにする目的で、1)AIRE遺伝子が、抗原提示に関わる免疫関連遺伝子に対してどのように転写調節作用を発揮するか、2)逆に、AIRE遺伝子自身の発現がどのように調節されているか、3)AIREは単独で機能するのではなく、他の遺伝子と協調的に働いている可能性が高いため、AIREと協調して働く分子を同定する、などの解析項目を中心に、現在、AIREの細胞生物学的解析を継続している。
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