線虫、ヒト、ショウジョウバエにおいてCED-5、DOCK180、Myoblast、City (MBC)という構造上相同性を示す分子が同定され、これら分子はその頭文字をとってCDMファミリー分子と総称される。DOCK2はリンパ球特異的に発現するCDMファミリー分子であり、我々はノックアウトマウスを作製することで、この分子がリンパ球遊走に不可欠であることを明らかにした。 本年度は、DOCK2欠損が感染免疫に及ぼす影響を検討した。C57BL/6マウスは、Th1型の免疫応答を惹起することでLeishmania major対して抵抗性を示すことが知られている。しかしながら、DOCK2欠損C57BL/6マウスはLeishmania major感染性となりこれにはリンパ球遊走能の低下のみならず、免疫応答の質がTh2型にシフトすることを明らかにした。また、リンパ球のRac活性化に関わるDOCK2機能ドメインを同定することを目的に、DOCK2の発現を欠くTリンパ腫細胞株に種々のDOCK2欠失変異体を発現させた細胞株を樹立し、細胞形能、極性化、アクチン重合、Rac活性化につき比較解析した。うち、1種類のDOCK2欠失変異体ではRac結合能が保持されているにもかかわらず、Rac活性化能が顕著に低下し、その結果アクチン重合が誘導できないことを見い出し、この欠失部分に会合する分子(DBP1)及びDBP1に会合する分子を同定した。また、これら分子の機能を明らかにするため、新たな遺伝子改変マウスを作製した。
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