研究課題
特定領域研究
黄色ブドウ球菌のβラクタム耐牲、グリコペプチド耐性獲得の遺伝学的メカニズムを明らかにして、その耐性獲得・発現を柳制する予防・治療法の開発に資することを目的とした。以下の3つの研究領域で戒果を挙げた1)Vancomycin-intemediatae S. aureus(VISA)の新規耐牲メカニズム- 「CIogging理論」-の数学的・実験的検証 我々が世界で最初に分離した臨床分離VISA株Mu50、および世界6力国からのVISA分離株には、cell-wall peptidoglycanの肥厚とcross-linkingの低下が共通に見られる。今回、我々は、厚い細胞壁では、より多くのバンコマイシンが細胞壁に消費されるだけでなくしバンコマイシンの細胞質膜上のターゲット分子(umrein monomer precursor)への結合飽和が30分以上遅延することを実験的に証明した。数理モデルを構築し、細胞壁内でのバンコマイシン拡散係数が経時的に減少することが、このメカニズムに対応していることを見出した。2)Glycopcptide耐性に開与する遺伝子の同定バンコマイシン耐性に関与する遺伝子を特定する目的で、黄色ブドウ球菌全ゲノムを固着したmicroarrayを作成し、遺伝子発現解析を行った。その結果、glycopcptideに(あるいは同時にβ-lactum耐性にも)関与すると推察される(新規8個を含む)17個の遺伝子を特定し発表した。複数の異なる遺伝子産物が、過剰発現することでglycopeptide(およびβ-ラクタム)耐牲に影響をおよぼすことが明らかとなった。3)メチシリン耐性を伝達する staphylococcal cassette chroumsome(SCC)のブドウ球菌属菌種の進化における役割一新規のgenome island "oriC environ"の提唱 S. haetaolticus株の全ゲノム塩基配列の決定を行い、既存の7株の黄色ブドウ球菌、2株のS. epidermidis株のゲノムとの比較ゲノム解析を行った。その結果origin of replication(oriC)の隣に数百kbの外来遺伝子が集積する染色体領域が存在し、そこに種の特異性を担う遺伝子が多く見出され、この領域oriC environにはSCCが複数挿入しており、この遺伝因子が、菌種間、菌属間を伝達して、現在のブドウ球菌菌種の多様性を生み出したものと考えられた。
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