研究課題
特定領域研究
表皮からIL-18を大量に分泌するように遺伝子操作したマウスは、Th2応答やIgEがなくてもIL-18依存性にアトピー性皮膚炎(AD)を自然発症する。臨床研究により、疾患重症度と血清IL-18値間の正の相関が示された。これらの事実から、IL-18に依存するADの存在が予測される。黄色ブドウ球菌に感染するとADは増悪する。そこで、AD増悪因子である黄色ブドウ球菌成分を用いたADマウスモデルを作製し、病態とメカニズムを解析した。マウスの表皮細胞は、黄色ブドウ球菌毒性因子であるprotein A (SpA)刺激により、IL-18を分泌した。AD-proneなNC/Ngaマウスに、界面活性剤を塗布して皮膚バリアを破壊した後に、SpAを連日塗布すると、掻痒性皮膚炎が誘導された。組織学的には、表皮の肥厚と真皮の炎症が観察され、多数の好酸球、マスト細胞、リンパ球などの浸潤像が観られた。また、血清IL-18濃度は上昇したが、IgE値は増加しなかった。一方、所属リンパ節Th細胞はIFN-γ、IL-3、IL-9、IL-13を産生する。この様にTh1サイトカインとTh2サイトカインを産生する特殊なT細胞が誘導されており、報告者は本細胞をSuper Th1細胞と今後呼びたい。IL-18中和抗体を投与すると、SpA/SDS塗布によるSuper Th1細胞への分化誘導が阻止され、また、AD発症も回避された。更にIL-3中和抗体を投与しても、AD発症は阻止された。以上の結果から、黄色ブドウ球菌が関連するADに対しては、IL-18を標的とする治療、さらには予防が有望であることが示唆された。更に、Th1細胞がアレルギー性炎症を誘導するのは、抗原+IL-18刺激を受けると、肥満細胞増殖因子であるIL-3とIL-9を産生できるからであることが明らかとなった。
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