研究課題
我が国の科学技術黎明期に関する種々の資料には、知識として書かれた書物や文献があり、その理解の実態として製作された実物資料がある。本研究では、この知識と実際の使用やそれに伴う伝統的振舞いなどの動的資料についてメディアテクノロジやネットワークなどの情報技術を背景にこれらの様々な形で存在する資料を研究者や一般に対し具体的な解りやすい形でデータを集積展開しコンテンツ化することが目的である。ここでは主として2つのアプローチからこの問題に取り組んだ。一つは、視覚情報を介したコミュニケーションネットワークについての研究であり、一般的な文字による情報検索とともに、写真などの画像データとともにこれに付随する属性データとして撮影時間や撮影位置情報などとの関係を用いた情報提示についての検討およびプロトタイプを作成した。もう一つは、新たな民族芸能や伝統舞踊等の動的資料のデジタルアーカイブについて形態情報の3D大型デジタイジング装置による形状データ、アクティブ赤外線方式および光学式モーションキャプチャリングによる三次元位置データとともに筋電などの生体情報や時系列的な足圧分布などを情報として用いた新たな手法について検討した。具体的には、歌舞伎や韓国民俗芸能サムルノリなどを対象としたコンテンツ制作を行ない作品として内外のコンペ等に出品し高い評価を得た。このように、収集した様々なデータをユーザの目的に応じて再編し、理解しやすい形で提示することは、江戸のものづくりで行われた様々領域の研究を横断的にまた俯瞰的に把握する上で当該分野の研究に寄与するものと考える。